Ⅰ.先生に教えて-君の【秘蜜】-

※一部『凌辱恋心』と内容リンクあり

 

 

頭ン中 常時情事
純情な春情 健康に淫行
従え この淫事に忠実に

 


【recollect】

 

「なんで勉強しなきゃなんないの? サインコサインとか、将来役に立つわけ?」


「勉強に意義なんか求めるなよ。テスト問題の答えを求めろよ」

 

 それが、最初の会話だ。


 白い校舎に狭まれた、四角い青空に映える、白い煙。

 緑萌える中庭に初夏の風が舞い込み、白衣の裾とタバコの灰を散らす。

 

 ‥あの色あざやかな場面は
 うやむやにしていた
 グレーの心にも
 いまだ鮮明な記憶として
 想い出にもならない。

 

「ケホッ…! ていうか、勉強する意味ないと、やる気でないって言ってんの」


 タバコの煙にむせながら、一年の女子生徒は反抗的な視線を相手にぶつけた。

 先月から就任したばかりの保健教諭は、自分こそ最近まで学生だったくせに、生徒に対し傲慢な態度で先生を演じるから頭に来る。


 くせ毛の茶髪。白いシャツの隙間に鈍く光る、首元のシルバーアクセ。

 袖から見えるゴツい腕時計は、教える側としてはふさわしくない装飾だ。

 白衣姿でかろうじてそれらしくみえるが、健全な午後の空気にそぐわないいでだちは、不健全な夜の住人の匂いを漂わせる。


「つーか美穂はさァ。将来とかもう決めてんのかよ」

「……ちょ、気安く名前呼ばないでくれる?」

「なんで勉強するか。そんなん悩む方が時間の無駄だろ」


 そう言ってホストまがいな格好の保健医は、タバコを地に捨てると高価な皮靴で踏みつけた。

 

 ……この宮城という男。最悪だ。

 

 美穂にも授業に出席しない非はあるが、生徒の見本であるべき教師がこの有様。

 話す気の失せた美穂は、相手がベンチに座ると同時に立ち上がり、お気に入りだった中庭の場所を明け渡すことにした。


 と、宮城はふんぞり返って足を組み、美穂を呼び止めた。


「あー待て待て。ケツの青いガキには、青くさい言い方のがよかったな」

「……は?」

「いーか、勉強とは。それは先人の偉人が築いた英知を知る、ロマンだ」

「なにそれ。ロマンて。ほんとくさい」

「わーった。じゃ真剣に答える。つまりだな、成長過程のオマエらの脳に様々な知識や情報を与え、思考力や記憶力、計算力・応用力とか集中力とか、そーゆーいろんなもんを発達させる必要があんだよ」

「……はぁ? ていうか、どーせなら役に立つこと教えてよ」

「まぁ、勉学に意義を見出せず、脱力感を抱くのはわかるが」


 白衣のポケットに両手を入れ、徐に立ち上がる。

 宮城の目線が美穂の顔一つ分、高くなる。


「大人の事情も考えてみろォ。進路に関わる受験や就職の際、オマエらの能力、得手不得手、将来性とか性格とか、大勢いる人間一人ひとり正確に把握しきれないわけ。そんでオマエらに一律に与えた問題に対し、どんだけ『勉強』っていう点数で成果出せるかを判断材料の一つにしてるわけ。将来役立つ役立たないはさておき、つまり『やる気』をみるバロメータでもあるわけ」

「……うん……なんかもう、意味わかんない」

「ハハ。とは言ったが勉強もわかれば面白い。やるやらないも美穂の自由。ただ…」

「ただ?」

「高校生活はたった3年。青春ド真ん中の貴重な時間を、ボケーッと過ごしてムダにするのはもったいねェよ」

「……」


 いい加減に投げかけた問いに対し、全く…よくしゃべる男だ。

 就任したばかりの中途半端なやる気を空回りさせている。


 会話の終了を見て取り、美穂は宮城に背を向けた。


 ――風に流れる、黒髪ストレート。

 夏の陽射しに眩しく光る、白い肌。

 稀有に綺麗な顔立ちをしたその少女は、だが虚無の表情に覆われ、輝かしい未来に向かえる多くの可能性を秘めた歩みすら、気だるそうな足取りだ。


 いつも授業もろくに受けず、何をするでも誰といるでもなく、ただ孤立している生徒。

 勉強、それに加え集団生活における人間関係……恋だの友情だの、若さを謳歌する学び舎に立てるのは今しかないというのに。

 就学の場を自ら放棄するとは、実にもったいない。

 だがそれを彼女にいくら説いたところで、理解には及ばないだろう。

 青春とは過ぎてから気付くもの。

 

 宮城は頭をかいて立ち上がった。

 ゆっくり近付けばいい。

 生徒との関係を築くのは恋も同じ。

 女を落とすと同様に焦らず、だ。


 背を向けた宮城に、今度は美穂が振り返って相手を呼び止めた。


「あ。ねぇ、ちょっと」 


 ミニスカートから下着が見えそうなことに、構わないのか気付かないのか。

 その場にしゃがみ、何かを手にする美穂。


「これ。ちゃんと捨てなよ」


 地面で折れ曲がった煙草を手で拾いあげ、相手に突きつける。


「あー? 悪ぶってるくせにクリーン活動か? エゴのエコかよ」


 白衣の胸ポケットから携帯灰皿を取り出し、宮城が蓋を開けたので、美穂は吸殻を入れながら呆れた。


「ちょっと、持ってるならそれ使いなよ!」

「ふは。これな、俺の『テスト』なんだよ」

「はぁ~?」


 タバコのポイ捨てパフォーマンス。

 気にもとめないか指摘するか、何か思っても言えないか。

 宮城予想『教師に注意できるチャンスにいい気になって図に乗る』は、ハズレ。

 まさか大穴、『みずからゴミ(先程まで宮城が口に咥えていて、宮城が靴底で踏みにじったもの)を何の躊躇なく拾う』とは…優等生の行動だ。


「クク……美穂、本当は良い子ちゃんなんだな」

「……別に。私のお気に入りの場所、よごされたくないし」

「わかってるよ美穂。お前は本当はやれば出来る子なんだよ」

「は? なに、私のなに知ってんの?」

「あれ、お前ホメて伸びるタイプじゃないのか。叱られて伸びるタイプの方か」

「そーやって生徒に取り入ろうとしないで。教育方針マニュアルとかそんなみたい。うさんくさい」

「そーか、ガキはやっぱ青くさい方がいーか。違うんだ、先生な……美穂と分かりあって力になりたい」

「だからマニュアルっぽいよ、超わざとらしい!」


 次第に声量が増し、声色は明るいトーンになる。

 本人も笑顔になってから、うかつにも少し笑ってしまったことに気まずさを感じ、赤くなった顔を背けた。

 

 ――この時はまだ、何の他意もない、他愛もないスキンシップのつもりだった。

 

 だが意図せず焼き付く色あせない場面は…

 心を彩る、美しい記憶。

 

【chapter01】――――――――――――――――――――――――――

 


「……オイ。コーヒーはブラックに砂糖いっぱいっつったろ」

「だから、1杯入れたけど」

「“1杯”じゃねーよ“いっぱい”だ! 甘みが足りてねェ!」

「じゃあ自分で入れなよ。てかそれブラックじゃないし」

「るせェな。黒いからブラックでいんだよ」


 無加糖のブラックーコーヒーが飲めたら大人の証、などと誰が勝手に決めたのか。

 酒飲みだが甘党であり、味にうるさいが愛飲するのはインスタントコーヒーの、宮城という白衣の男。

 

 時は午後。
 場所は保健室。

 

 中でベッドに腰掛けるのは、サボリの場所を中庭から保健室に移し変えた、白鳥美穂。

 外でベンチに腰掛けていると、決まってこの男が話しかけにやってきて、他の場所に行こうとも考えたが、これから寒くなる季節。

 保健室なら暖を取れるし、それに…。


「で? 美穂の好きな男ってのは、どーゆー奴なんだ?」

「…え? えーと、…えへへ…」

「『えへへ』て。何テレてんだコイツ」

「だってその人、めちゃくちゃクールで、すっごい優しくて、超カッコいんだもん」

「クールで優しくてカッコいい? 俺以外にその形容詞を使っていい男なんかいるか? あ、俺か」

「ちがうよ! 宮城先生その正反対だし!」


 宮城はあきれるほど自己陶酔ぶりを発揮する男だが、ここまでくると、いっそすがすがしい。

 しかし、登校や授業を強要したりせず、教師と生徒の中間に位置するような不良教師。

 そんな相手には気遣いも遠慮も無用で、美穂は次第に、宮城に対して心を許すようになっていた。

 彼女が孤立していたのは人間嫌いというわけではない。

 単に、話し相手がいなかっただけだ。


「コラ待て。今のが正反対ってんなら、俺は『熱くて冷たくてブ男』じゃねーか。イミわからん訂正しろ」

「先輩は超モテるけど、それを全然自慢したりしないの」

「無視か。シカトかスルーかコラ」

「宮城先生みたいにナルシストじゃないの。全然エロくないの」

「マジか。つかエロくないとか、男として失格だな」

「なんで? 男らしさにエロさとか、むしろいらないでしょ」

「フッ…。そーか、美穂オマエ処女か」

「は!? な、なんでわかるの!」


 こういった話に免疫がないのか、美穂は真っ赤になって慌てるあたり、なるほどやはり処女かと頷かせる。

 処女膜が有るか無いか、ではない。

 “男”がなんであるかを知っているか、いないかだ。


「そんで? ムッツリスケベのどこがいんだって?」

「うるさいなぁ。ガッツリスケベよりいいよ。って、先輩と話したことないんだけど」

「はァ? 話してねぇのにエロくねェとか、そいつが好きとかあるのかよ」

「エロさはもういーよ! だから、入学式のとき…」


 ――入学式の時。

 遅刻して、その時はさすがに慌てて行って。校門くぐったら、渡り廊下にめちゃくちゃ美形の男がいて。私と目が合ったらね、自分の首元を指で指すから、何だろと思って私の見たら、…リボン裏表が逆だったの! でね、恥ずかしくて急いで直して、そのひと見たら、ニコッて微笑んだの! あのクールな顔が、ニコッって!! そしたら入学式で、生徒会長の挨拶したのが、その先輩だったの。も~、すっごいカッコよかった~!!……


「……」


 ‥‥なんだコイツ
 こんなペラペラ
 喋るんだったのか


 宮城は甘すぎるコーヒーを口に含み、甘ったるい話を鼻で笑った。

 オトメゴコロってのは、かくも簡単に揺れるものなのか。

 実にお手軽な恋だ。

 たまたまそんな場面に遭遇したところで、ソイツの何が分かるってんだ。

 大人同士であれば話は早い。

 キスして脱がして挿れるだけ。

 体を合わせて、気が合えば付き合えばいい。

 要は子供なのか……いや、子供だって体から恋愛を始めるこのご時世。

 なのに美穂といえば、少しの下ネタも話せないほど純情で、遠くから想いを寄せるだけという。


「宮城先生は相手の目も見れないよーな、初恋とかなかった?」

「ねェな。そんな気になるなら、話しかけるなり押し倒すなりすりゃいーだろ」

「…うわ、もう最悪。オトメゴコロ、わかってない」


 ‥そっちこそ
 オトコゴコロの
 わからん奴め


 殺風景な保健室に、無自覚に無垢な白い色華を振り撒き。

 麗しの女子生徒は、無用心な密室で、無防備にも他の男の名を口にする。


「でも…先輩は、誰のものにもならないからいいの」


 そんな不毛な恋で
 青春を終らせる気か


「――美穂。オマエ片思いとか、似合わねェよ」

「な、なにそれ。悪かったねっ」

「いや。美穂はモテ側だろってホメ言葉だし」

「…そーでもないよ、全然モテないよ」


 黙っていても男を寄せ付ける美貌の持ち主が、何をほざくか。

 叶わぬ恋など時間の無駄。

 無意義な情思より、有意義な情交を楽しむ側に堕としてやろうか。


 湧き上がる、ほんの悪戯心。
 沸き上がる、ドス黒い欲望。


 まだ汚れを知らないなら
 そのカラダに
 たっぷりねっとり
 教えてヤるよ


 美しい穂を刈るのは、“奴”ではない。

 収穫にはまだ早い?

 ――いや、豊作。実りは良い。


 椅子から立ち上がり、近付いてきた宮城を、何か薬品でも取りに来たのかと美穂は特に気にとめなかった。

 しかし宮城の中に生じた苛立ちは、ベッドに腰掛ける美穂をそのまま押し倒させた。

 生徒に馬乗りになった保健教諭の端整な顔立ちに、長い前髪が一束、ハラリと降りる。

 力強く腕を押さえ付け、間近に迫る宮城に、美穂は初めて男を感じた。


「え……なに、宮城先生。冗談…」

「つーか、その生徒会長。何でモテるんだろな」

「ちょっ…、まって…なにっ…」

「どー考えても俺のがいい男だろ。アイツさえいなけりゃ、この学校のNo.1は俺なのによ」

「だから……っやだ、変態! 脱がさないでよバカッ…!」

「オマエも見る目ねェよな…どっちがイイか、わからせてやるよ」


 一体何をどうわからせる気なのか。

 美穂の二つの腕を片手で捕えると、もう片手ではリボンを解き、ブラウスのボタンを開けていく宮城。

 制服を脱しにかかる手に逆らおうと暴れるも、美穂の二の足には相手の膝に割って入られ、完全に宮城に組み敷かれてしまった。


「や、…うそ、やだ、だめ……っいやぁああ…!!」


 “先生”なのに
 保健医といえど
 “教師”なのに


 でも今は、宮城がただの“男”に見える…。


「やっ……やめて、宮城先生…!! やだやだっ…!!」

「ったく気にいらねぇ。なんで俺よりアイツがモテる?」


 サカリの付いたオスは獲物の鳴き声を無視し、脱がせたブラウスで腕を頭上のベッドの柵に縛り付けて捉える。

 白い下着からは隠しきれない色香が溢れ、冷めた眼差しに這われる白い頬は紅く染まる。


「やぁあっ…!! やだっ…宮城先生、やめっ………んっ、ぅ……!!」


 声を洩らせないようにと、宮城は美穂の小さな唇を自分の唇で塞いだ。

 …それは美穂にとって、初めてのキス。


「……は…、んっ……!!」


 顎を掴んで上を向かせ、美穂の舌を追い、軽く噛みつき、舌先で弄ぶ。


「ん、んぅうっ……」


 下唇に吸い付き、歯茎をなぞるように舌で辿る。

 そしてまた舌を絡め合わせ、吸い付いて弄ぶと、美穂の洩らす吐息が少し熱くなる。


「はっ……ぁ、…ふァ……!」


 ディープキスなんて、他人と舌を絡めるなんて、想像しただけで気持ち悪いと思っていた。

 しかし不意を突かれた突然の暴行は、美穂の知らなかった…激しくもやわらかな、実に甘美な感触。


 溶ろけるような大人のキスに、美穂の抵抗は確かに半減していた。


「んっ…ぁ……、…せ…んせぇ、なん…で……」


 唇を軽く吸い、チュッと音を立てながら離す宮城に、美穂は潤ませた瞳を返す。


 宮城は確かに生徒から人気があり、しかし本気で応じるようなことは一切なく。

 他で大人の付き合いがあると言っていたし、美穂が宮城以外の誰を支持したところで、彼がライバル心を燃やす必要などないはずだ。


 …それ以前に宮城は教師。なのに、なぜ…。


 しかしそんな美穂の愚問を、宮城は鼻で笑った。


「なんで? …ま、俺も男だからな」


 教師と生徒という禁断の関係こそ燃え上がるというもの。

 モラルを講じる立場でありながら、インモラルの魅力こそ重々承知。

 社会的地位を賭けた危険な行為すら、宮城には遊びのスパイスの一つでしかない。


「や…、やめて……! やぁあっ…!!」


 涙目で訴える表情もまたそそる。

 ブラのフロントホックを外すと、白い素肌の豊かなたわみが零れ落ち、現れた薄紅色の乳頭が小さく揺れる。

 宮城の視線が尖端を捉えると、美穂は羞恥に泣き震えた。


 ――この男は本気だ。

 冗談などではなく、強引に美穂をモノにしようとしている。

 大声を出して助けを呼んだら、宮城は免職だろうか。

 犯罪者になるだろうか……。

 美穂は自分の身を案じながら、相手の将来を案じた。

 ――そこが彼女の甘さだった。


「や、ぁあっ……!」


 二つの胸の膨らみに手を伸ばす宮城。

 中心を避け、ゆっくりその柔らかさを楽しむように揉みあげる。


「ぁっ…や…めてよ、…んぁっ…だ、だめぇえ…っ…」


 皮膚の色素が薄い美穂は、乳頭まで透けるような薄桃色をしている。

 その小さな実を親指と人差し指で捉え、指の腹で優しく撫でる。


「ぁあっ、やっ…だめ、…んっ…んん…!!」


 反応し、次第に硬く大きくなるそれをキュッと摘み、擦りあげると薄紅の実はますます堅く育つ。


「ァ、はっ……ゃ、だ…ぁあああっ…!!」

「やだ? 乳首ビンビンに勃たさせといて何言ってんの?」

「なっ……ゃ、そ、んなっ…ふぁああっ…!!」

「顔が赤いな。感じてきたんだろ? ほら…」

「ぁあ、あっ、あっ…!! だ、めぇっ…あぁ、ああぁっ…!!」


 二つの実をやんわりと、しかし執拗に愛で続け、美穂の反応を楽しむ宮城。

 いつも人をからかう時のように、クックッと意地悪く笑いながら。

 …でも今日は、別の顔。


「ぁっ、…ん、んンンッ…!!」

「美穂、いい声で鳴くな…もっと聞かせろよ」

「やっ…ぁ、…っ……!」

「ガマンすんなって。もっとも、ガマンできるかどーかだがな…」


 いやらしい手つきで乳房を揉みしだきながら、戯けるようにペロリと舌を出す宮城に、美穂は更に焦った。


「ゃ…やぁっ…」


 その舌は美穂の、乳房から尖端までを、ゆっくりと這いあがる。


「ひ、ぁ……あっ…!!」


 舌に触れられた所から、くすぐったいような、甘い痺れを感じる。

 逃げ腰になる背中に宮城の手が回り、まだ知らない快感を目覚めさせようと、舌先は実に絡み付いて揺さぶる。


「んんっ…!! …ゃ、…あぁぁ…っ!!」


 荒々しく両手で乳房を揉みながら、代わるがわる舌と指で乳首を攻め唇で吸いあげ、…美穂の表情を盗み見る。


「ぁ、ああぁっ…!! ぁ、先生ぇえ…っ、ぁああ…っ…!!」


 声を堪えることを忘れ、激しい感覚に追いつけないと必死で喘ぎ、いつもと違う表情を見せる美穂には、乱れた髪が良く似合う。


 もっといいコト 
 教えてやろう‥


「ぁ…だめ…!! やだ、やっ……だめぇえ……っ…!!」


 スカートに忍ばせた指で下着を、…裂け目を下から上へとゆっくりなぞる。


「ゃ、ぁっ……そ、…んな…、んっ…!!」


 指の腹が捉える、まだ芽吹かない蕾。

 爪を立て、布一枚隔てたそこを引っ掻き、刺激を与える。


「っぁ、あ…!? …っんあぁあ…!!」


 美穂自身で知らなかった場所。

 だが細かくコリコリと弄ばれ、熱く痺れて疼きだす。


「ゃ、だめっ…なんか、ソコ…ゃ、ぁああっ…!!」


 弱々しく震える小動物のような美穂。…可愛い過ぎて加虐心を煽られる。

 宮城は自分の下唇を舐め、悪戯をする少年のようにまたクスクスと笑った。


「ここ。感じるだろ?」

「…ゃ、やっ………ゎ、わかんなっ……」

「わからない? 足りないか?」


 下着越しに割って入り、更に激しく爪で擦る。


「あ、ぁ…っ…!! んっ…やぁあ…っ…!!」

「初めてにしては随分いい反応だな。ここも少しずつ勃ってきたぞ」

「…ぁ、ぁっ…!! …っあ…、~~っ…!!」

「なぁ。気持ちいいんだろ?」


 布が形取る程に固くなった小さな突起にこだわり、宮城は重点的に責め続ける。


「やぁあ…ぁ、あっ、ああ…!! だめぇえっ、そんな……んぁああ…!!」

「だめ? 気持ちいい、の間違いだろ? 見せてみろよ」

「ぇっ……や、やだぁあああ……っ…!!」


 泣き喚く美穂に構わず、両脚を胸の上で曲げさせ、下着を膝までずらす。


「や、いやっ…!! …ぃゃあああ…っ…!!」


 流れる涙には同情より劣情を催す宮城の、不躾な視線が捉える初花。

 初めて男に見せる、美穂の園。


「綺麗だな…それに、ククッ。やっぱもう濡れてるな」

「……っ…!?」「快感を得ると、女は男を招くために愛液を分泌する。…初めてだっつーのに、襲われて感じたんだな美穂は」

「なっ、ちがっ……もぉ、やめてよぉおっ…!!」

「いーから。もっと良くしてやるさ。ほら…」


 小さなぬめりの音を立て、侵蝕の指は花弁をそっと開く。


「いゃ、ああぁっ…!! ゃ、やだっ…見ちゃ、だ…めぇ……っ…!!」

「なんで? 綺麗な美穂の花びらを、もっと咲かせてみせろよ」

「…ぃゃっ…いや…ぁ…あぁっ…!!」


 普段は強気で意地っ張りな美穂だが。

 強がりを一皮むけば、弱々しく泣く少女。

 欲望の包皮をむけば、艶かしく鳴く処女。


 それが本当の姿なら
 もっと見せてみろ


 恥じらう表情をわざと見降ろし、少し溢れた花の蜜を指で掬い、むき出しにさせた蕾に塗り付け緩く滑らせる。


「ゃ…っあぁあ…!! な…に……ふぁ、あああぁっ…」


 すでに熱を持った蕾は快楽に自身を震わせ、さらに蜜をにじませる。


「ここ、美穂のクリトリス。感じるだろ?」

「っ…だ、めっ…ァ、やっ…せ…んせぇえっ…!!」

「だめ、じゃねーだろ…一度イくか?」

「…な…っ、!?」


 攻める手段は指だけではないと、宮城は美穂の足の付け根を舐め上げる。


「ひぁ、ああぁっ…!!」


 下着を脱がして片脚にかけ、二つの太ももを持ち上げ開かせる。


「ゃ、あっ…!! こんな…の…、やめてっ……やだぁああっ…!!」


 これからされる行為を予感し、美穂は真っ赤になって泣き喚いた。

 涙をこぼし嫌がる素振りは、罪悪感への訴えだろうか。


 ‥逆効果だよ美穂
 さらに欲情
 させる気か?


 蜜をこぼし震える素振りは、期待感の表れだろうが。


「ふぁ あああっ…!!」


 小さな蕾を舌でペロリとひと舐めする。

 と、透明の体液が…美穂の欲望が一筋、流れ落ちる。

 その蜜を舐め掬い、ザラついた舌で彼女の情欲の突起を上下に揺さぶる。


「ぁ、あっ、やめっ…そ んな、ことっ……ああぁっ、ひあぁああっ…!!」


 時折ヌルヌルした舌の裏で刺激したり、舌先では蕾の根元から先までゆっくり弄ったりと、違う快感を与えてやる。


「ふぁあ、あぁああっ…!! 宮城せ…んせぇえ…っ…!! ゃ…あぁ、あっ…、あああっ…!!」


 美穂は足を震わせ、秘裂からはまた愛液を垂れ流す。


「オマエ、初めてのわりにスゲー濡れるな。無理やりされてんのに、そんな感じるか」

「やぁあっ…ちが、ぅ、…ちがぅっ…!」

「クク。気持ちいんだろ。そんならもっと…良くしてやるよ」


 宮城は美穂の恐ろしく敏感な箇所を口に含んで軽く吸い上げ、舌先でゆっくりじっくりと弄ぶ。


「ひぁ、ぁあああ…!! 吸っちゃ、やぁあっ、んぁああっ…!! 宮城せ…んせぇえっ…!!」


 淫事に膨らむ秘芽をさらに鋭敏に開発してやろうと、時間をかけて快感で犯す。

 それでも、充血して腫れ上がる急所を緩急つけて攻めぬく舌の妙技は、腰を浮かせて求める美穂に、次第に限界を迫る。


「ゃ、ああぁっ、も…ぉ、だめぇええっ!! なんか、へんっ、あぁっ、んぁああ…!!」

「イけよ……気持ち良くイかせてヤるから」

「い、くっ…て、…やぁっ、こわいょぉっ……ひ、ああぁ…!! ァ、も、だめっ、…お、かしくなっ ちゃ…っあああ!! 宮城せんせぇええ…!! あぁっ!! あっ、ぁああああー…!!」


 行き着く先を模索する体の芯で、何かが弾けた。

 美穂は初めて快感の頂点に到達し、泣き震えながら全身で悦楽に浸る。


 ‥こんなこと
 奴はして
 くれないだろ?


 美穂の中の奴を消し去ってやる。


 手口が卑劣?
 そらそーだ。


 手と口で体と心を汚し、俺色に染めてやるよ。


 つまり陵辱も、了承させればいいってこった。


「ハァ…ハァ…ッ…、んっ…」


 自身に起きたことが信じられないというように、自分に覆い被さる宮城を見上げる美穂。


「もうイったか。襲われて、まんざらでもねーんだな」

「…な、そんなっ…」

「気持ちよかったんだろ?」

「~~…っ…!」


 人を襲っておいて、全く悪びれる様子のない宮城に。

 彼の手にかかり絶頂を迎えてしまった美穂は、否定しきれずに顔を赤らめた。

 さらに追い討ちをかけるように、恥じらいの表情を覗き込み、唇にキスをしてやるとビクリと縮こまる。

 まだ少し怯えているようだ、救いの言葉を耳に吹き込んでやろう。


「安心しろよ。…まだ終わりじゃねーし」

「…っ……え…」

「もっと、気持ちいいこと教えてやるよ」

「…っ……!? い、やぁあっ…!!」


 性感開発はまだ序の口。

 女は下の口こそ、開発して慣らしてやらなければならない。


「っ…やだ、先生っ…やだぁあっ…!!」

「いーから。力抜けって」

「やぁあっ…な…に、…入れ、ない で…ぇえ…っ!! やめっ……ひ、ァ、あああぁっ…!!」


 それはベッド脇の棚に並べてあった、彼の趣味で集めているアンティーク薬瓶の一つ。

 まずは円筒状のガラス瓶を、ゆっくり体内に挿入させていく。

 ただ、それだけ。

 男根ほど太くはないというのに、全く大騒ぎなもんだ。

 閉じた入口はしかし半透明の薬瓶を粘液で招き、じわじわと呑み込んでいく。


「っあ、ぁあ…!! や、いた、痛いぃっ…!! ぁっ、や、ァ…!!」

「力、抜けって。余計に痛くなるだけだ。楽にしろ」

「…んあぁっ、…あ…ふぁ、な…んか、はぃっ…て、くるぅっ…!!」

「すごいな。ガラスだから、美穂のナカ見えるぞ」

「ゃ、やっ…!! …見、ないでっ、…やぁあああっ…!!」


 濡れた膣壁を視姦され、美穂は精神的にも犯される。

 宮城は透明の薬瓶に押し拡げられる腟壁を覗き込みながら、一気にそれを奥まで挿入させた。


「ぁ、ああああ…!! ぃ、あ、あっ……!!」

「中でヒダがビクビクうねってるぞ。やらしーなぁ」

「ゃ、やだぁっ、…いた ぃっ…!! 先生っ…もぅ、やめ……ぁ、あぁあああっ…!!」

「ククッ…ほらほら。すっげ、ヤラしい図だなぁ美穂」


 ピンクのブラウスに腕を縛られ紺の制服を乱し、白い脚を大股に開いたまま、桃色の淫門に半透明の薬瓶を出し入れされて悶える女子生徒。

 溢れる蜜には少しの赤みが混じり始めた。

 だが透明の粘液は、鮮血の色素を薄めたりはしない。

 透明の愛液に浮かぶ赤色、それはとても美しかった。

 美穂の初めてのしるしに、宮城は目を細める。


「ひっ…く、…ふぁ、あっ、ああっ…ぃやぁあっ…、宮城、せんせぇえっ…!」


 弱々しく泣き濡れる美穂。

 さらに泣かせてやりたいが、彼女から求めさせるのも一興。


「美穂。痛いか?」

「…ぃ、たいよぉっ…! だから、もぉっ…や、めっ…」

「コッチは? クリ勃起したままだし、まだイけるだろ」

「っん…ぁ、あぁぁぁっ…!! や、やめっ…ぁ、ああっ、…んぁあああっ…!!」


 姿を現したままでいた美穂の淫靡な突起を、宮城の指が突く。

 絶頂を知った蕾は、再び与えられる快楽に歓喜して身を震わす。


「やぁああっ…だ、めぇっ…、あっ…やっ、……だめぇええっ…!」

「こんな固くしといて、だめじゃねーだろ。本当はどーなんだ? …してほしい、だろ?」


 薬瓶を出し入れしたまま、美穂自身の分泌した愛液を、くるくると淫核に塗りつける。


「や…ぁ、ぁあぁあっ…! ひぁ、ああぁんっ…!!」

「なぁ。もっとクリトリスいじめてほしいだろ」

「んんあぁっ…やっ…やだ、いやぁあっ…そんな、ことしちゃ、だめぇええっ…!!」

「おいおい。濡らしまくって喘いでも説得力ねぇよ」

「ふぁあぁっ…!! やっ…、んっ、だめっ、…感じちゃ…う、感じちゃ、ぅ、んっぁああっ…!!」


 感じる?
 それはそうだろう


 快感を激しく擦りあげる、親指と人差し指の丹念で機敏な動きに。

 この期に及んで、感じることに抵抗があるとは言わせない。


「ふーん。オマエ薬瓶突っ込まれて、クリいじられて感じてんだ」

「ぁ、あっ…! だ…っ、て、ふぁっ…ああぁ、…宮城、せんせぇえっ…!」

「このままイきたいか?」

「…やっ…いやぁ、もぉっ…や、めっ…んぁあああっ…!!」

「やめて欲しい? …あっそ。じゃーイかせねェ」


 期待で胸を膨らませ、興奮で蕾を膨らませている美穂。

 それを知りつつ、わざと中断しながら問いかける宮城に、美穂は跳ね上がりそうな快感を制限される。


「んんあぁっ、ぁっ……は、…ぁああっ……ぁ、や、ぁっ…」

「瓶を吸い込む力が凄ぇな。オマエ、こんなの締め付けて悦んでんだな」

「ぁっ…あ、宮城、せんせぇ…っ…」

「…美穂、本当はどうなんだ? イきたいんだろ…もっと気持ちよくしてほしいだろ?」

「…っ…は、…ぁっ…宮城せんせぇえっ…!! んっ……、…っ…!!」

「もうガマンできねーだろ…ちゃんと言ってみな? 『クリいじって。もっと瓶ツッコんで私をめちゃくちゃにして』…ってな」

「――っ…!!」


 口の端を歪ませ、嘲笑いを浮かべる宮城。

 こんな意地悪の前でも、だが切羽詰った美穂は、快楽をもらうために…無条件降伏を選択するしかない。


「…ッ……ぃ、じ…っ、て……」


 小さくかすれ、消え入りそうな声。


「あ? なんだよ、聞こえねーよ」

「…いじっ…て、…もっと、クリいじって瓶つっこんでっ…、私をもっと、めちゃくちゃに…犯してよぉお…っ…!!」


 瞳から涙を流しながら、膣からは愛液を流しながら。

 美穂は宮城に懇願することで、欲望に目がくらみ、抵抗しつつも快感を受け入れていたことを認めた。

 またからかうなら好きにすればいい。

 気持ちが良くて、何が悪い。


「ククッ……そーだ、美穂。よく言ったな。いー子にはご褒美やるよ」


 淫欲に正直になった少女には、悦楽を与えるべく。

 宮城は美穂の要望に応えた。

 彼女の望んだように、クリトリスを指で優しく弄り倒し、薬瓶の抽送を繰り返して激しく体を蹂躙してやる。


「ひゃっ…あんっ、ぁああ…っ…!! ふぁ、ァああっ、あっ、…せんせ、ぇ、っあ、ぁあああ…っ!!」

「美穂オマエ、ほんとエロい女だな。めちゃくちゃやべェ光景だぞ」

「ゃ、やだぁあ…っ、ぁ、ああっ、宮城せん、せっ、あっ、ああぁっ…だめぇえっ、…き、もちぃ…っ…!!」

「…つーか、コレ一応襲われてるってこと忘れてんだろ」


 強引に突っ込んだはずの、冷たかったはずの薬瓶には、美穂の情熱が伝わり温かい。

 迎え入れる薄紅の花弁は真紅に深まり、開花しては蜜を流して醜猥に咲き誇る。

 ――実に嬌艶な姿態だ。


「ああぁ…っ…や、…もっ…ぁああっ…、ん、ぁ、なんかっ…ヘンにっ…なっちゃ…ああぁあっ…!!」

「ヘンに? なってみせろよ。見ててやるから」

「…っあ、ゃ、はずかしぃよぉ、…あっ、ふぁ、ああぁぁ!! 宮城せ、ん…っ…せぇえっ…!!」


 激しく貫かれては太股が震え、未知の感覚に怯えつつも。

 受動的だった快楽を、能動的に得ようとしてしまう。

 一度味わった、もう知ってしまった感覚の限界値。

 あの高みにたどり着けるなら、導かれたい別天地。


「美穂、初めてでこんなんされて感じるなんて…変態だな」


 性欲に素直になれば
 感度は増す


「ふぁあっ…ゃっ…それ、先生のがヘンタ…、ぃ…っ…!!」


 そらそーだ
 乱れる女に
 勃つのは男のサガ


「ハハ。美穂が可愛いから、つい苛めたくなんだよ…」


 濡れる原因が
 自分にあるなら、
 尚更な。


「せ、んせ…」


 美穂はふと、自分にイタズラをする猥褻教師を見た。

 …バカだな、何も怖いこたねーだろ。

 そう言いたげな、柔らかな眼差しで返される。

 宮城が知ってか知らずか時折見せる、優しい微笑み。


「あ、…っゃあ、あっ、ぁあああっ……!!」


 耳障りな恥辱の水音を立てていた凶器の瓶は、今は灼け付く狂喜の武器。

 愛液で滑る宮城の指が、荒ぶる快楽に昇らせる。


「ゃ、ゃぁっ、宮城せ、んっ、いっちゃっ、ぁ、あぁああ……!」


 激しく打ち付けられる衝撃に、美穂の中で快感が弾けた。

 泣きながら背中を弓なりに反らし――…絶頂に浸って身震して、残り火を惜しむように淫猥な熱情に酔いしれる。

 その様子を、ご満悦の表情で眺める宮城。


 美穂を悦ばせるのは
 このオレだ‥
 離れられなくしてやる


「……っ…は、ぁっ……は……っ…」

「ククッ。良かったろ」

「……っ、…」


 宮城の言葉に、美穂の頬には紅が差す。

 恥辱の行為に2度も絶頂した後では何も言えない。

 荒れた息を整えながら、美穂は観念したように、頷くように俯いた。

 全身が蕩けるような余韻が引けば、あるのは虚脱感だけ。


「さて…じゃあ、もういいな」


 美穂に挿入したままだった薬瓶を、ゆっくりと引き抜く宮城。


「ンんっ…、…ぁ…っ…」


 半透明のガラス筒からは、透明の蜜が欲望の痕をひく。

 美穂は何も言わずに顔を背けた。

 ここまで来た以上は、次は…相手の欲望を放たれるのだと。

 覚悟を決めなければいけない時が来たと、美穂は強姦魔の前で観念した。

 自分に覆い被さる宮城に、美穂はギュッと目を閉じた。

 しかし、その心配は杞憂に終わる。


「ナニ期待してんだ美穂。汗と股拭いて早く服着ろ。風邪ひくぞ」


 宮城は美穂の腕を解くと、すっかり興味を無くしたかのように丸椅子に腰掛け、タバコを取り出した。

 意味がわからない、といった様子で、美穂は上半身を起こす。


「…え…、せ、んせ……」

「そろそろ教室帰れ。カギかけてねーんだココ」

「…あっ、カギ…!?」


 制服で裸を隠しつつ、慌ててドアに駆け寄る美穂。

 急いで鍵に手をかけると、背中から宮城の笑い声が聞こえた。


「わっははは! 必死だなー美穂。いーからパンツくらい履けや」

「…う、ウソつき! いつ、カギかけたの!?」

「あー。オマエがまずいコーヒー入れてるスキにな」

「…あの、時…!?」


 つまりこれは衝動的ではなく、計画的だった、と?


「……宮城先生、なんで…」


 美穂の疑問に、タバコを口にした宮城はポケットから何かを取り出し放り投げた。

 それをキャッチし、美穂は手を開く。


「! これ…」

「保健室の合鍵だ。続きしてほしかったら、また来い」

「…く、来るわけないじゃんっ! なんで私が、つ…続き、とかっ…!」

「あそ? それならそれでいーし」

「……」

「ほら、チャイム鳴ってんぞ。行け」

「…宮城、先生…」


 こんな目に遭わせておいて、教室に帰れと?

 だが性欲を発散すると思われた宮城は、結局白衣を脱がなかった。

 やはり意味がわからない。

 なぜ…、……。


「……」


 とりあえず、ここに長居は出来ない。

 服装を整えた美穂はドアを開けて廊下に出ると、宮城を一度振り返った。

 そして無言で見つめたまま、ゆっくりと閉め…保健室をあとにする。

 それを見送ると、宮城は椅子の背にもたれ、深く、長い溜め息を吐いた。

 灰皿に長いタバコを押し付け火を消し、自分の中で燻っている情熱を消す。

 体が興奮状態にある時に、喫煙なんてするもんじゃない。

 平静を装うカモフラ用にしても、タバコを味わう余裕がないからだ。


「……はー。こらえるのは結構キツいな」


 流し台で薬瓶を洗おうと掴み、美穂の愛液の付いた指をペロリとひと舐めする。

 あんなに濡れて乱れた美穂に、本当は自分の熱情も解き放ってしまいたかった。

 …もちろん、初めはそのつもりだった。

 だが、美穂には他に好きな男がいる。

 それでは『次』に繋がらない。

 …なら、奪えばいい。

 今度は教えてやった体の悦びを求め、美穂から宮城に踏み寄らせなければ。


 恋もSEXも 
 イーブンでなければ

 

 それが宮城の言い分。

 

 ――と、その時。勢いよくドアが開き、美穂が息を切らせて保健室に戻って来た。


「お? 早いな、もう俺が欲しくなっ…」

「……せんぱい、が…」

「……!」


 弱々しく震える美穂は、乾いたはずの涙を落とした。

 恐らく、運悪く廊下で“奴”に出くわし、宮城に奪われた初体験を後ろめたく感じ逃げ出した、といったところだろうか。


 ‥だからって
 なぜここに来る


 制服が乱れたままなら、保健室でナニがあったかを自分でバラしてる所だ。

 だが愚かな羊は一度襲われたにも関わらず、無防備にも狼の前で泣き出した。

 …群れない羊は、他に心を許せる場所がないから。


「美穂、オマエね…」

「……ヒッ、ク……」

「……」


 こんな状態の美穂を再び襲うほど、宮城も無粋ではない。


 ‥馬鹿馬鹿しい
 全く腑に落ちない
 実に腹立たしい


 声を殺して泣く美穂を腕で抱え、胸に抱き締める。

 ――体を奪った男より、心を奪われた男に泣く女を。

 

 ‥なんで襲った俺が
 慰め役なんだ?

 

 これ、
 イーブンか?

 

 当分、
 一方通行だな‥。

禁断りんご since2018.12.24