愛寵の寵愛

飛ばすぜ性

跳ばすぜ精

是正するな至高なる思考

 

 

 

 

 

 

 恋患い[コイワズライ]は、心の病だ。

 

 

 保健医である宮城は専門外の病状、『恋』を、そう定義づけた。

 

 とはいえ、まず恋愛は人それぞれ違う形があり、一言で表すことは出来ない。

 

 今この場合、美穂という一生徒におけるものだ。

 

 

 もちろん宮城において恋愛の定義は、単純明快『エロス』なのだが、それはさておき。

 

 

 例えば両想いだとか、これから発展していくものなら、共に何かを築き、何かを得ていくのだろう。

 

 しかし相手と話したこともないという美穂の場合は単に『好きな人』=『憧れ』であり、軽い初期症状の自覚があるだけで、充分に治療が可能だ。

 

 

 そこで医者の出番、…まさしく保健医である宮城が、生徒を優しくいやしく…ではなく、いやすべく。いやらしく癒すべく。

 

 患者が医者を頼り、自ら心の扉を開けるのを待つことにした。

 

 

 

 

 

 

 

【recollect】

 

 

 

「私、人のウワサ話とか、好きじゃない」

 

 

 数ヶ月前。

 

 新緑と、薄着がまぶしい初夏のこと。

 

 

 真っ直ぐに落ちる黒い髪艶、それは半袖ブラウス胸部でゆるやかに湾曲する。

 

 細い指先に一束を絡め、クルクル巻いては、憂いの黒い瞳で追う生徒、白鳥 美穂。

 

 大人びたようにみえる落ち着きは、15にしては冷めているだけだ。

 

 高校に入学してから、この半年。

 

 寡黙な美貌は、羨望と妬みで男子女子ともに注目を集める。

 

 孤立している彼女への勝手な人物像は、根も葉もない噂話となって一人歩きしていた。

 

 

「『小学校のとき下着売買、援交、売り、ヤリマン、妊娠、流産、貢がせてポイ、ヤリマン』…ねぇ。マイナスイメージばっかだな」

 

 

 そう返すのは、いつも昼休みに一人で中庭にいた美穂に、何度か声を掛けてきていた若い保健医。

 

 

「…先生いま、ヤリ…て、二回言ったでしょ」

 

「あ? なにが?」

 

「…だから、ヤ……もういい…」

 

「オマエ、そんな単語すら言えないレベルなのかよ」

 

 

 机の上に両脚を投げ出し、保健室内だというのに(教育上、衛生上に問題有りな)煙草を平然とふかしては、白い息を深く吐く、宮城慧という男。

 

 彼もまた、今年この学校に就任したばかりの『一年生』。

 

 しかしその姿は、いわば白衣を着たただのヤンキーだ。

 

 美穂は眉をひそめて軽く手を振り、煙を散らす。

 

 

「…だって、友達とか苦手なんだもん。くだらない話なんかで盛り上がれない」

 

「感じ悪ッ。そらそんなテンションじゃ、お友達は出来ねーな」

 

 

 確かに彼女は人を寄せ付けない雰囲気を放つ。

 

 そんな高嶺の花に挑む男子は自信があるだけにレベルが高く、それがさらに女子の反感を買っていた。

 

 

「人の彼氏に色目使ったとか、因縁つけられたり泣かれたり…色々めんどくさい。だから、一人の方が楽」

 

「はーん。でも本当に心の底から一人が好き、って訳じゃねんだろ」

 

「…それは、……うん……」

 

 

 素直に頷く美穂。

 

 集団行動の中で、一人でいるのは孤独だろう。

 

 せっかくの学校生活を、楽しめず思い出も作れず、というのはもったいない。

 

 

「もう学校、やめよーかな…」

 

「それも手だな」

 

「…止めないの」

 

「止めて欲しいのか?」

 

「そーじゃなくて!! 先生じゃん!!」

 

「そーだけど?」

 

「……」

 

「わーったよ。じゃ先生らしく言ってやるよ」

 

 

 灰皿に煙草を押し付け火を消す。

 

 机から脚を降ろし、机に両肘を乗せて、まっすぐ生徒と向き合う。

 

 真剣な顔で、一言。

 

 

「毎日、俺に会いに来いよ」

 

「…はぁ?」

 

「仕事もあるけど、ヒマなんだよ。話し相手になってくれ。…あーでも授業中はダメだわ、俺が怒られる」

 

「…全ッ然、先生らしくない」

 

「先生らしーだろォ。『授業は出ろ』ってのが」

 

「それ、先生が怒られたくないだけじゃん!」

 

 

 声に少しの弾みが出る。

 

 警戒を解いたのか、美穂は宮城に対し、笑顔を見せるようになる。

 

 その無邪気さを、なぜ同級生に向けられないのか…。

 

 

 ――以来、ほとんど毎日、保健室を訪れるようになった美穂。

 

 やっと見付けた“居場所”。

 

 『先生らしくない』、宮城という保健教諭を信用して――…‥。

 

 

 

 

【chapter02】――――――――――――――――――――――――――

 

 

 ――時は戻り。

 

 読書の秋、紅葉の秋。

 芸術の秋。食欲の秋。

 

 そして、性欲の秋。

 

 

 

 中庭を挟んでA棟B棟と並ぶ、二つの校舎。

 

 そしてそれらを結ぶ連結棟。

 

 運動場に沿って渡り廊下を歩けば、体育館がある。

 

 そのどこで、いつ彼と出くわすか。

 

 美穂が校内を歩くときには、常に警戒をしなければならなかった。

 

 しかし、ふいに後ろから声を掛けられる、といったことはなく、たいてい気が付くのは美穂の方が先だ。

 

 本人曰く『無造作ヘア』の、白衣の襟足でハネる栗色のクセ毛。

 

 背も声も、態度もでかいから、どこにいてもすぐに分かる。

 

 しかもたいてい数人の女子生徒をはべらせている……先日生徒の美穂に猥褻な行為をした、保健教諭宮城。

 

 その日も、B棟のロビーで笑い声を響かせている生徒たちの中心に彼はいた。

 

 遠くからそれを見ていると、宮城がこちらに気付く。

 

 目が合ってしまい、赤くなる顔を見せないように背を向けるが、大声で呼び止められた。

 

 

「よぉ美穂! 元気か?」

 

 

 …言うに事欠いて『元気か』、とは…。

 

 呆れて首を振り、振り向かない美穂。

 

 しかし拒絶を示された相手はそれを気にせず駆け寄り、白衣をなびかせ横に並ぶ。

 

 

「コラ。シカトすんな。仮にも俺ら、他人じゃねんだし」

 

「…は!?」

 

 

 驚く美穂の手に馴れ馴れしく指を絡ませ、さらに相手を焦らせる宮城。

 

 

「ちょっ…やめてよ、人前で…」

 

「あー悪ィ。人がいないとこのがいいか」

 

「そうじゃなくて…!」

 

 

 まわりを気にし、その手を振りほどく美穂。

 

 一体何なのか。悪びれるどころか、どこまで偉そうなのだ、この大人は。

 

 

「宮城先生、なんであんな……」

 

 

 厳しく追求するつもりが言葉に詰まり、体温が上がる。

 

 途切れた質問を理解しながらも、わざと続きを待つ宮城の視線が、さらにそれを煽る。

 

 だがここで意識してしまったら、…思い出してしまったら、美穂の中の何かが崩れて、二度と宮城と対面すら出来なくなってしまう気がして。

 

 無理矢理に、勇気を震わせて立ち向かう。

 

 

「――なんで、あんなことしたの?」

 

 

 ずっと疑問だった。

 

 教師なのに、生徒に手を出すなんて。

 

 しかも彼はプライベートで何人か女がいる節を見せていたし、確か好みの女性は、下はせいぜい大学生のはずで、宮城のストライクゾーンから外れた美穂は完全にアウトのはず。

 

 しかしその問いには、彼自身も明確な答えを持ち合わせてはいなかった。

 

 

「…だからそれは愚問だ。性衝動に理由なんてねんだよ」

 

「せいしょー……ヤりたいだけだったの!?」

 

 

 つい大きくなった声に、美穂は慌てて自分の口を押さえた。

 

 その様子を鼻で笑う宮城。

 

 

「まぁまだヤッてねーけど。強いていえば、それを駆り立てる美穂が悪いな。うん」

 

「はぁ!? 意味わかんないんですけど!」

 

 

 普段クールな彼女が声を大にして苛立ちを表すと、廊下で行き過ぎる生徒たちは驚いた。

 

 しかし美穂が怒れば怒るほど、宮城にはそれが面白くて仕方がない。

 

 

 ‥まぁそれは

 胸にしまうとして

 

 

「そーいえば。オマエの好きな先輩とやら、彼女出来たらしーな」

 

「……! ……かの、じょ…」

 

「ま、ウワサだし。ウワサ嫌いの美穂が、それに振り回されるわけねーか」

 

「……」

 

 

 意地悪く言ってやるが、美穂は黙ってうつむいたまま。

 

 

 ‥違うだろ

 そこはマジ落ち

 すんなよ

 

 

「相手。だれか知りたいか?」

 

「いい……聞きたくない」

 

「もうあきらめろ。忘れろって」

 

「……」

 

「しょーがねーな…」

 

 

 いつのまにか目の前に立ち、美穂をそっと抱きしめる宮城。

 

 

「俺が優し~く、忘れさせてやるって…」

 

 

 耳元で囁く声、慣れた手が腰に回る。

 

 冗談なのか本気なのか……こんな時に、こんな場所で。

 

 無神経極まりない態度に、キレそうになる。

 

 

「――最っ低…! バカ! ヤリチンちぎれろ!」

 

 

 キレそうというかキレた美穂は、美穂なりの精一杯の暴言を口にして、宮城を突き飛ばして走り去った。

 

 その様子に、周囲の生徒は保健医のセクハラを笑ったが、宮城自身もクックッと笑いをこらえる。

 

 

 全く…

 からかいがい

 ありすぎんだよ

 

 

 

 ――その日の放課後。

 

 ひとつの予感に、宮城は保健室の内側から鍵を掛けた。

 

 外側から開くことがあるとすれば、…たった一つの合鍵だけ。

 

 

 

 そして、何人かそのドアを開けようとする生徒が現れては、開かないことに気付くと立ち去った。

 

 保健室本来の目的で、怪我や体調を崩した場合なら、表に記した仕事用の携帯が鳴るはず。

 

 しかし、それは沈黙したままだ。

 

 しばらくして、窓越しに姿勢のいい一つのシルエットが現れた。

 

 ドアの前で少しキョロキョロし、意を決したように開けようとするが、やはりそれは動かない。

 

 すると再び辺りを見回し……。

 

 

 ――カシャン。

 

 

 静かにドアを開けて中に入り、元通りにするために今度は内側から鍵をかける。

 

 

「ふぅ…」

 

 

 小さく息を吐き、手の中の合鍵を握る。

 

 彼女だけが持つ、保健医からの“優遇パス”。

 

 

「……よォ、美穂」

 

「――っ!?」

 

 

 誰もいないと思ったのに人の声がし、美穂は慌てふためいた。

 

 見ると、手を頭の下で組み、医療ベッドの上で寝そべる眼鏡の男がいる。

 

 

「ちょっ…宮城先生、いるのに何で鍵なんか…患者受け入れ拒否!?」

 

「だから、その『患者』だけ入れるよーにしただろ」

 

「なに、患者って…」

 

 

 そんな宮城こそ、先生というか、保健医なんかじゃない。

 

 ただの変態男だ。

 

 そう言ってやりたかったが、この保健室に自分から来てしまった気まずさに、美穂は目をそらす。

 

 宮城は続けた。

 

 

「来ると思ったよ。オマエは結局、ココしかねーんだ」

 

「…思い上がんないでよ、私はただ…」

 

「そう。美穂には居場所がないんだろ? 学校にも、…おそらく家にもな」

 

「……」

 

 

 情けない話。でもその通り。

 

 何も言えず、美穂はうつむく。

 

 

「両親…姉キとも話さねーのか? 反抗期か家庭不和か知らねーけど…」

 

「…そんなんじゃない。理由なんてない。話すのがイヤなだけ」

 

「俺の前ならよくしゃべるくせにな~。まぁオマエくらいの時には誰だって、理由なきネガティブテンションな時はある」

 

「なにそれ…べつに、退屈なだけだもん」

 

「だから俺と楽しーこと、しに来たんだろ?」

 

「ち、が…」

 

「どーせ先輩とやらも、今頃女とナニしてるさ。…美穂も奴にされたかったか?」

 

 

 ――オトナなんか、

 最悪

 

 

「なんでっ…何で先生は、先にそれが来るの…!」

 

 

 ‥コレだからコドモは

 めんどくせぇ

 

 

「哀しき男のサガかな」

 

 

 さぁ、どーしてくれようか。

 

 また縛り付けて自由を奪うか?

 それとも後ろから襲ってやろうか。

 

 そんなことに思案をめぐらせていると、美穂のすすり泣きが聞こえ始めた。

 

 

 ‥あーあ

 泣いちゃったよ

 

 

 多少驚いたが、それをみても宮城は何の同情もわかなかった。

 

 なんでそこまで誰かを想えるかとか、自分はドライアイだから潤いが羨ましいとか、…きれいな瞳には涙も似合うなどと思いながら美穂を見つめた。

 

 

「美穂…オマエ、何しに来たんだ?」

 

「――は!? なにって…」

 

「なぐさめて欲しいんだろ? 来いよ…」

 

 

 手を差し伸べ、中指でチョイチョイと招く。

 

 

「…っ……」

 

 

 涙を拭いながら、躊躇しつつ、しかし引き寄せられるように…美穂は宮城の元へ歩き出した。

 

 

 問診は終わりだ

 食指で触診してやるよ

 …優しくな。

 

 

 寝そべったままの宮城は手を伸ばし、横に立った美穂の頬の雫を拭う。

 

 そしてそのまま首に回し、自分の方へと誘い招く。

 

 美穂は少し構えたが、グイッと引き寄せられ、目線を唇に置かれた。

 

 これは…キスへの展開なのかと、美穂も相手の薄い唇を見つめる。

 

 少し開かれたが、それは言葉を発するためではなかった。

 

 

 ‥ああ、いきなり

 ディープなんだ

 

 

 話が早いというか、手が早いというか。

 

 唇で唇に噛みつき、舌を這わせる宮城。

 

 思わず美穂は後ろに身を引いた。

 

 が、捕らわれた腕力には敵わず、…もう逃げられない。

 

 ゾクゾクするような舌のうごめきに、少しの吐息が漏れる。

 

 

「……っん、は…」

 

 

 のこのことやってきた獲物に軽く吸い付いては舐め、口内に深く侵入させ味わう宮城。

 

 スローでも情熱的にヒートアップさせていく。

 

 重ねる唇、交差させる舌は、しかしこの間のような荒々しさとは違い、優しかった。

 

 ――教師側は大人で、生徒は子供。

 

 そして男と女。

 

 二人の間にあるのは『恋愛』ではなく、純粋なる『欲望』。

 

 

 ‥わかってる

 それでも

 したいから、する

 

 

 誰でもいい訳じゃない。

 

 つらいことを紛らわすためだけで、誘いに乗るには危険な香り。

 

 あんな目に遭わされたばかりなのに…甘い罠は魅力的。

 

 そういった意味で、美穂の中で宮城という先生は、少しだけ『特別』な存在なのかもしれない。

 

 

「っ…、…んぅっ……」

 

 

 されてばかりでもない。

 

 美穂も次第に宮城に応じて舌を絡めはじめる。

 

 ほんのり香る煙草の苦味は、嫌いじゃない。

 

 脳を溶かされていくような心地よさ、気持ちよさにゾクゾクする…。

 

 宮城といえば、口付けを交わしながらも目は閉じなかった。

 

 髪を耳にかけて自分に覆いかぶさり、まぶたを下ろした美穂を、じっくりと観察するため。

 

 ねっとりと舌を動かし、軽く噛み付いては、キスだけで感じて震える相手を、さらに時間をかけて可愛いがる。

 

 

 ‥好きな奴を忘れたい?

 それだけじゃないだろ‥

 情欲に溺れたいんだろ?

 

 

 宮城は美穂の腰を抱え、持ち上げて自分の上に乗せ、またがらせた。

 

 

「んっ……、わ、先生…!?」

 

 

 そして柔らかな体のラインをたどり、胸のカーブで往復する。

 

 

「…っ、あ……」

 

 

 制服の上からでも、はずむような弾力。

 

 片手で楽しみながら、もう片手で抵抗のない美穂を脱がしていく。

 

 そして目に留まる、ブラウスの下から現れた黒いブラ。

 

 白いレースと白い肌が映える。

 

 

「…これ、オマエの勝負?」

 

「べ…つに、そういうわけじゃ…」

 

「脱がされるの、意識してないわけじゃなかったんだな」

 

 

 見られてもいいものを選んだろ、と笑う宮城。答えず、照れ隠しに美穂が問う。

 

 

「……こういうの、好き?」

 

「似合っていれば何でも」

 

 

 せっかくなので、下着は付けさせたまま。

 

 ブラのストラップを肩から外し、カップを下にずらす。

 

 

「ん…」

 

 

 緊張する心臓の上を、眼鏡の下の強気な瞳に捉われる。

 

 

「せんせぃ…」

 

「あ?」

 

「…メガネ…」

 

「あー、コンタクト割れたんだ」

 

 

 恥ずかしいから、外せとでも?

 

 

「似合うね。なんか、インテリっぽい」

 

「…こういうの、好きか?」

 

 

 今度は逆に宮城が問う。

 

 ふちの無いフレームを、それっぽく上げてやる。

 

 

「うん、似合うから」

 

 

 本当はコンタクトの方が便利だが、目が乾いて仕方が無い。

 

 眼鏡は最中に邪魔なのだが、楽だから仕方が無い。

 

 度が入ったガラス越しに見る、露出したオッパイに黒髪が降りていて、いい眺めだ…などと思っていると。

 

 

「…好き」

 

 

 なぜかその音だけをチョイスしたかのように、耳に響いた。

 

 目線を上げると、頬を染めて微笑む美穂。

 

 

 ‥いや、

 分かってる

 それは眼鏡のことだ

 

 

 『好き』などと影響力のある言葉を、そう簡単に口にするなよ。

 

 それは美穂の、大切な男に言ってやればいい…。

 

 

 

 快楽に思考など邪魔だ。

 

 邪念を払い温もりを求める。

 

 

「…っ、ん……!」

 

 

 男にはない、女性特有の肌のキメ、柔らかさ。

 

 女の魅力が集結した、発育のいいD70(推定)。

 

 手のひらで包み込み、弾力ある感触を堪能する。

 

 

「ぁ、…あ……っ」

 

 

 直接触れられ、宮城の指の動きに息を乱す美穂。

 

 切なげに声を弾ませ……いい表情だ。

 

 美しく白い肌、そしてその頂の紅い美の極みにそっと触れ、成長過程を見守る。

 

 

「んんあ、っ……ぁ、ふぁっ…!」

 

 

 勃起させた乳首を、さらに堅くさせようと執拗に撫でる。

 

 甘い快楽を与えて成熟させ、食べ頃になった実を頂こうと、宮城は上体を起こして膝で立たせた美穂の背中を抱え、そっと口に含んだ。

 

 

「ゃっ……あぁああ…! あぁ、あっ…ん……!!」

 

 

 その箇所に与えられる――舌の温かいぬめりに包まれ揺さぶられる快味、そして器用な指先が煉る疼き。

 

 左右からの耐え切れない淫らな責めに、美穂は体をのけぞらせて震えた。

 

 思わず宮城の肩をどけようとするが、相手はびくともせず、余計に強く抱えられる。

 

 優しく転がされ、かと思えば吸われ弄られ、さんざんな目に遭い、尖る。

 

 

「はぁっ…あっ……んぁああ…!! ゃあ、あ、あぁあ…!!」

 

「暴れるなよ…素直に受け入れろ。これからが、お楽しみなんだ…」

 

「ひぁ…! ん、ぁ……っ!」

 

 

 スカートの上からお尻を撫でられ、びくりと震える美穂。

 

 その様子に、宮城はククッと笑う。

 

 

「ずいぶん敏感になったな…美穂の体は完全に、エロスにモード移行したな」

 

「っな、そんな…」

 

「……濡れてんだろ」

 

 

 眼鏡越しから見据えるように、美穂を覗く瞳。色素の薄い目は、黒い瞳孔を鋭く光らせる。

 

 

「……っ」

 

 

 何で、意地悪言うんだろう。

 

 からかってるの? 楽しいの? …はい濡れてます、って言えってこと?

 

 

 

 もしこれが、

 先輩なら‥‥

 

 

 

「おいコラ、美穂」

 

「……濡れて、ないよ…!」

 

「ちげーよ。…何考えてる? こんな風に、奴にもされたいと思ったか?」

 

「――! 先輩は…、そんなこと…しない…っ」

 

 

 …そう思いたい。

 

 誰かを想い、その誰かを抱くなんて…。

 

 

「美穂、幻想を抱くな」

 

「え…」

 

「男はな…みんなエロスの化身なんだよ」

 

 

 官能という観念が形として現れた、その化身の手は、美穂のエロスを覆う下着へと向かう。

 

 

「あっ…!」

 

「いや、男女差別はよくねーよなァ? 女だって、欲情する…」

 

 

 ナイロンは水分の浸透が早い。

 

 下着の湿った部分を確かめるように、宮城は美穂の恥丘を指でたどる。

 

 

「んっ…!」

 

 

 布一枚隔て、恥ずかしい部分に触れられ…それでいてもどかしく、目を閉じる美穂。

 

 細い首筋にキスをし、宮城は唇で軽く噛む。

 

 

「ぁ、あっ…!」

 

「言ってみろ、美穂…今オマエをよがらせてるのは、誰だ…?」

 

 

 舌で耳の裏側をたどると、その体が小刻みに震える。

 

 

「んっ……は、ふぁ…」

 

「美穂が濡れたのは、誰に対してだ?」

 

 

 強弱をつけ、秘丘をなぞる。探り当て、花が包む蕾を摘む。

 

 

「あ、ぁあああ…っ! …宮城、せんせ いっ…!」

 

「そうだ…他の男のことを考えるな…!」

 

 

 邪魔者は追い出してやる

 

 

 

 枕の下に手を伸ばし、仕込んでおいた物を取り出す。

 

 電気コードの延びる怪しい物体に、美穂は臆した。

 

 

「……っ…、ゃ……なに、それ…」

 

「知らねーの? っとにお子様だなァ、美穂チャンは…」

 

 

 きっとピンクが似合うと新調した、大人の玩具を手に。

 

 宮城はレンズの奥で目を据わらせたまま、笑った。

 

 

「美穂。自分でスカート持ってろ」

 

 

 あごでそれを促され、恥じらいながらも美穂が従うと、膝で宮城を間にまたいでいるその姿は、まるで自分から誘うような、ねだるような格好にさせられる。

 

 

「……っせ、んせぇ…」

 

「いい眺めだな…しっかり持ってろよ」

 

 

 宮城が下着に手をかけ、それを途中まで降ろす。

 

 

「あっ…!」

 

「やらしーなァ。糸引いてるし」

 

「……っ!!」

 

 

 疼く部分をさらけだされる……視力は悪くても、眼鏡でどこまで見える?

 

 と、やはり見えづらいのか、眉をひそめた宮城は指で花弁を広げ…

 

 

「…あーあ。すげー物欲しそうだな。そんなに気持ち良くしてほしーか」

 

「ゃ、っ……! 宮城先、せ…っ……んっ…ぁ…!」

 

 

 蜜の上を指で滑らせ、相手の羞恥をくすぐる。

 

 熱を孕んだ痴態を弄ばれ、血の巡るのは顔と体、そして淫部。

 

 欲情フラグを立たせる美穂に、勃つ。

 

 

「あぁぁっ…あ、はぁっ……ちょっ…何、やだ……やめて…!」

 

 

 ポケットから医療用テープを取り出し、玩具のコードを太ももに巻きつける宮城。

 

 未知の物への恐怖と、興味に湧く美穂の、淫らな花芯にそれをあてがう。

 

 

「教えてやるよ。こう使うんだってな…」

 

「えっ……」

 

 

 薄笑いの宮城が手にする、小さなリモコン。

 

 その指がゆっくり、何かのスイッチを押し上げる…。

 

 

「ぁ……あっ…や、…ぁあっ……い、やぁああ…ぁ…っ!」

 

 

 花びらをめくられた蕾に、突然微震が襲う。

 

 低い機械音を立てる装置で丸く核心をなぞられ、快感を揺り起こされる。

 

 

「ゃっ…そ……んな、の…っ、……だめ、やめて…! ああっ、ふ…ぁっ、んんン……っ…!」

 

 

 レベル1.スカートを力強く握り、目を閉じて必死で耐える美穂。

 

 だめとか言いつつ可愛い声出しちゃってるし。

 

 じゃあ次は、とスイッチを上げる宮城。

 

 

「ひぁあっ…! な、なんか、やぁあああ…! 宮城、せんせぇ、あ、あぁっ、あぁああ…!」

 

 

 レベル2.呼吸を荒げ、美穂の声のリズムが早まる。蕾が膨らみ、興奮に育つ。

 

 

「おい。スカートしっかり持ってろ。見えねーだろが」

 

「…み、見っ……ゃ、んやぁああっ! あぁああっ、持つ、もつか らぁっ…!!」

 

 

 下がってきた手を戒めるように、蕾に玩具を強く押し付けられる。

 

 刺激が強いのがたまらず、慌ててスカートを持ち上げる美穂。

 

 プラスチックの表面が濡れて光り始めたのを見て、宮城は次の段階に移行させる。

 

 

「や、やぁああああっ! ゃっ、ぃや、あっ、やめて、…ひぁああああ!」

 

 

 レベル3.振動に音を立て、見た目にも激しく小刻みに震えだす装置に、美穂も体を震わせる。

 

 太ももに固定されたコードに一筋の蜜が伝っていき、明らかに悦楽に浸っている様子がわかる。

 

 

「あっ…ぁああ、あ! ああっ! っあ! はぁっ、あっ、…やぁあああっ…!!」

 

 

 一定の強さでその一箇所を責められ、全身を快感に侵されていく美穂。

 

 性感を刺激するための小道具など、用意周到な宮城を恨めしく睨む。

 

 

「なぁ。下着にヨダレ垂らすのはいーけど、そっから俺の白衣にまで溢れさせんなよ」

 

「は、ふぁ、そんな…濡れてな…っ! ……んぁあ、ぁ、やぁああっ…!」

 

 

 つまらない見栄を張っても仕方ないというのに。

 

 透明の滴りはやがて垂直に落ちて下着へと到着して筋を作り、実に淫らな光景を描いていく。

 

 

「すげー濡れてるっつの。あー……まだ足りねーの?」

 

 

 首を傾げ、宮城は再びリモコンを手にする。

 

 

「……! い、いやっ…」

 

 

 しまった、と美穂が首を横に振る。

 

 が、こまめにレベルを上げ、様子を見ようとした宮城も面倒になり……レベル4を省略、一気にレベル5に設定する。

 

 

「だ、だめぇええ…! ふぁ、アッ、ァアあ! っあ! あぁあァッ、ゃあああああ…っ!!」

 

 

 大きな振動音を立てて暴れる装置に嬲られ、緊張に張り詰めていた蕾にそれは強烈すぎた。

 

 美穂は声を荒げて瞬く間に昇りつめ、小さな滝を流し、またいでいた保健医の白衣を汚す。

 

 

 その様子に、宮城は短く溜め息を漏らした。

 

 

 女は卑怯だ‥

 美しくも淫らな姿に

 心乱される‥

 

 

「ァッ……ァ、…はぁっ、…は……っ…」

 

 

 体を小刻みに身震いさせ余韻に浸る美穂に、スイッチを止め、一度落ち着かせてやる。

 

 だがまだ、太ももに巻いたコードをはずしたりはしない。

 

 

「やだやだ言いながら、ハデにイッたな美穂」

 

「……だ、…って…、ていうか…こんな道具、やだよっ…」

 

「やだ? こんなに濡らしといて、…『やだ』…?」

 

 

 冷たい瞳で蜜を眺めながら、リモコンを少し持ち上げる宮城。

 

 ギクリとし、美穂は訂正する。

 

 

「や、やだっていうかっ……、き、もち よかった、…けど……」

 

 

 ‥これはいい。

 

 玩具を操るリモコンで

 美穂も操れる

 

 

「膝で立ってんのもキツイだろ。ちょっとそこ座れ」

 

 

 言われて美穂は、快感を受け入れこわばった体を支える脚の疲れを思い出し、その気遣いに、宮城の両脚の間に座ることにする。

 

 

「…これ…もう、はずしてよ…」

 

「ダメだな。まだ小さいほうの玩具しか試してねーだろ」

 

「えっ…」

 

 

 何のことかと見た玩具は二つあり、そういえば先程一つのリモコン調整で大きな方も振動していた。

 

 まさか、と向かい合う宮城を見る。

 

 しかし怯える美穂に一向に構わず、保健医は凹凸のある棒状のモノをすでに患部にあてがっていた。

 

 

「…さすがに、こんな動きは俺もマネできねーからな…玩具なりの良さを堪能しろよ」

 

「ゃっ…やだ、入れちゃ……っ、んぁ、ァああ…っ!!」

 

 

 スイッチをオフにしたままの硬く長い淫具を、ゆっくりと沈められていく。

 

 

「あ、あっ…! せんせぇえっ…!! ふぁ、あ、あぁあああ…っ…!!」

 

「そんな締めるな…入れづらいだろ」

 

「や、ぁああ…! も、はいんな…っ……ゃあぁあああ…!!」

 

 

 強引で、一方的な宮城のペース。

 

 だがそれは素直になれない美穂にとって、どこか都合のいい『言い訳』。

 

 …そんなことは百も承知。

 

 ノッてやるが、美穂にもそれなりに応じてもらいたい。

 

 出し入れするたびに溢れ出る、透明の体液。

 

 こんなにも分かりやすく、淫部では気持ちがいいと応えるだから。

 

 

「美穂、オマエほんと感じやすいな。こんなに濡らす女みたことねーよ」

 

「んっ…ぁ…、…ぁあああっ……!」

 

 

 基準など知らない。そんなものあるかも分からない。

 

 だがそれは、宮城が見てきた他の女との比較だ。

 

 

「も……ゃ、めてっ…先生、…ぁっ、ぁああ…っ…!!」

 

「やめて、じゃねーだろ。もっと…だろ?」

 

 

 と、リモコンのスイッチを入れられ…

 

 

「ぁあああ…だめ、そんなっ…宮城先生…っ…」

 

 

 小さい方の玩具と、体内に埋められた玩具が揺れだし、それぞれから与えられる不気味な快感。

 

 宮城の手で、その加減は気まぐれに微弱から強力にと変化し、予期せぬ動きに翻弄される。

 

 

「ひぁあ、…ぁああ! や、あぁ、こ、んなのっ、…やぁあああ…!!」

 

 

 ――まだ、たった16の幼い少女。

 

 制服と呼吸を乱し、雫を落として淫らによがる美穂に巻き付けられたコードが不釣合いで、それがまた一層いやらしさを引き立たせる。

 

 やはり彼女に、淡いピンクはよく似合う…。

 

 リズム調整にして振動を機械まかせにしてリモコンを置き、勃起して宮城を待ち焦がれる乳首と胸に手を伸ばしてやる。

 

 

「んっ、ふぁあぁっ、あ…っ、ぁあ…!」

 

 

 キモチ、いい。こんなにされたらたまらなく、感じる。

 

 なのに払拭しきれない、美穂は何か胸のつかえも、感じる。

 

 

「ぁっ、ぁああ、あ…!! っ…あぁあああ…!!」

 

 

 激しい快感。

 

 でもイキそうでイけない。

 

 …何に引っかかる?

 宮城の言葉、行動の…何が不満?

 

 

「ゃ、せんせぇっ…! な…んで、こんなっ……んンぁあああ…っ!」

 

「どーして? そりゃあ…アレだ、美穂を感じさせて濡らして、恥ずかしそうな顔を見て…」

 

 

 ただ

 欲情させてみたい

 欲情させて、見たい

 

 

 それは他の男ではなく、この俺だけが。

 

 

「…汚すことで、美穂を手に入れたいのかもな…」

 

 

 眼鏡の向こうで苦笑する瞳。それは傲慢さではなく、彼の素顔。

 

 正直な言葉に、美穂の中のタガが取り払われ…一気に跳ねる、快感。

 

 

「――っ…! ッア…! アッ、ぃく、いっちゃぅ、…宮城せんせぇっ…!!、あ、あっ…ぁああああ…!!」

 宮城の手により昇らされ、堕とされる。そして美穂自身もそれを望んだ。

 

 …確かに、体はもう彼のものかもしれない。

 

 だが、まだお互いの体を繋いだわけではない。

 

 人は強欲だ。

 

 欲を満たされると、今度は更なる欲を求める。

 

 当初、宮城は美穂にその淫具を終始付けさせたままでいるつもりだった。

 

 きっと彼女もその方が悦ぶと。実際早々に二度絶頂したということは、その体にはいたくお気に召して頂けたことだろう。

 

 だが美穂自身は、そうではなかったようだ。

 

 

「…はぁ、はぁっ……も、外して…、よ……ぉっ…」

 

 

 情欲に震える体を、自らの腕で抱き締めるようにしてうつむく美穂。

 

 

「も……やだ…よ、……やめて よ……これっ…!」

 

「何言ってんだ、さんざん感じて濡らしといて…」

 

「――そうじゃなくてっ……!!」

 

 

 潤んだ瞳で睨みつける。嫌がっても説得力がないように思えたが…

 

 それはその理由が、宮城にはない発想だったからだ。

 

 

「あんなオモチャ、じゃ…やなの…」

 

 

 SEXにおいての遊び道具。

 

 快楽目的なのだから、ヘタなテクより感じる度合いは断然歴然の差。

 

 でも…

 

 

「……白…衣、脱いでよ…」

 

「あ?」

 

「私…こんな道具なんかより、…宮城先生と、…したいよ……っ……!」

 

 

 とうとう美穂は自分の意思を明確にした。

 

 宮城には一向に玩具を取り外す気配がなかった。だから気持ちを訴えた。

 

 確かに感じたけど…こんなもので扱われるなんて粗雑な気がしたから。

 

 自分の存在まで、ぞんざいに扱われた気がしたから…

 

 

「ハハ…なんだそりゃ」

 

 

 ‥そんなに

 ガッつくなよ

 

 

 

「オマエ、かわいーこというな。心配しなくても遠慮なくいただくさ、美穂」

 

 

 鼻で笑いながら玩具を取り外す宮城に、今度は意外にもすんなり聞き入れてもらったことには安心しながらも、美穂はまだ不満だった。

 

 

「……もうっ…」

 

 

 ばかにされた?

 聞き流された?

 

 自分が言いたかったこと、ちゃんと相手に通じただろうか。

 

 普段から可愛いとか綺麗とか褒め言葉を言われ慣れている彼女には、もちろん嬉しくないわけではないが、美穂はそういった類の単語を、社交辞令の一つとして聞くようにしていた。

 

 しかも女に軽い男(=宮城)からの言葉など、感情が伴うようには殆ど全く一向に聞こえない。

 

 だから美穂こそ相手の言葉を聞き流した。

 

 しかし、それは言う側がどんな気持ちかを知らないからだ。

 

 宮城サイドにしてみれば、それは性衝動を掻き立てられる程の、という最上級の意味を込めていた。

 

 

 覚悟しろよ‥

 今回は容赦なく

 イくぞ?

 

 

 バサッと音を立てて白衣を、衣服を脱ぎ捨てていく宮城は、美穂がはじめて目にする姿。

 

 そこにいるのはもはや『保健医』ではない。

 

 表れる逞しい体…教職という装いを脱いだ、ただの男。

 

 他の生徒達が来れない距離にいる。

 

 優越感がないわけでもない。

 

 

「つかオマエ、これ付けてみろよ」

 

「は? なにそ……、…っ……ゴ、ム!?」

 

 

 黒く丸い輪を手にする宮城のもう片方の手には、『極うす1ミリ』と書かれた箱。

 

 一体どこから用意したのか…美穂は呆れる。

 

 

「…それも枕の下に入れてたわけ!? 準備、よすぎ…」

 

「オイまて、手じゃない。口でつけろ」

 

「……はっ!?」

 

 

 美穂は渡されたコンドームを見たが、それ以上視線を落とせず固まる。

 

 

「あーもういい、貸せっ。それは後半戦にさせる」

 

「後半…て、…に、に…かい……め、…!?」

 

 

 時が止まったかのように硬直している相手からそれを奪い、素早く装着させる宮城。

 

 そして相手の肩を掴み、…掴みながら押し倒す。

 

 

「ゃっ…! 乱暴にしないで…優しくして…っ!」

 

「やべーんだよ…」

 

「え……時間?」

 

「絶対早い」

 

「?」

 

 

 下校時刻がせまったのかと、せわしない相手を見る美穂。

 

 …その澄みきった瞳。緊張に震える体はしかし、濡れて宮城を待ち望む。

 

 

 ‥そんなに

 あせらすな‥!!

 

 

 

 沸々と湧き、制止など出来そうにない精子。

 

 性欲を駆り立てる美穂に、今は配慮してやる余裕などない。

 

 コッチのペースで、まずはハイペースでイかせて頂く。

 

 込み上げる情欲。

 

 たぎる熱。

 

 欲しくてたまらない。身も心も、何もかも全てを奪ってしまいたい。

 

 

 ‥‥もう我慢ならねー

 

 

 

「イくぞ、美穂…」

 

 

 相手の両腕を両腕で押さえ、顔を覗く。

 

 相手の両脚を両膝で割り、組み敷く。

 

 

「やっ…落ち着いてよ……なんか、宮城先生…こわいよっ……!」

 

 

 さんざん挑発

 しといて‥

 もうおせーんだよ

 

 

 先走り、滴る劣情。

 

 ブレーキなど、かけられはしないのだから。

 

 

 治療といえば、やはり即効性のある注射だ。

 

 患者の体内に挿れ、――打つ。

 

 

「んンっ…ぁ、あああ…っ……!」

 

 

 小さな花びらを掻き分け、太い針を潜らせる。

 

 獲物にゆっくりと牙を刺し…支配と征服に酔いしれる、甘美の瞬間。

 

 

「ゃ、アッ…! …ぉっ…きぃ、むりっ……ぃ、た ぃょぉっ…!!」

 

 

 怯える相手に何の気遣いもなく、一気に串刺す宮城。

 

 受け口より大きなモノに裂かれ、美穂の背中に衝撃が突き抜ける。

 

 道具ばかりを使われた美穂が人と交わるのは初めて。

 

 それもその快感を教えた、あろうことか教師と。

 

 身動ぎしようにも押さえつけられた両手は相手の豪腕に敵うはずもなく、とまどいながらも抑圧を受け入れるしかない。

 

 

「きっついな…力、抜けよ…っ」

 

「んぁあっ…!! だっ…て、…宮城せ…、っ…んせぇ…!!」

 

「美穂…もうオマエは快感を知ってるはずだろ…?」

 

 

 律動に揺れる乳房に片手を伸ばし、緊張をほぐしてやろうと掴んで揺らす。

 

 

「っ……ぁ、ふゃ、んっ…あぁああ…っ!!」

 

 

 柔らかな胸の先端が小さく硬質化していく。

 

 指で捕らえると膣内が大袈裟にうねり、悦びを表現する。

 

 荒々しさに怖がって泣く美穂本人を差し置いて、肉壁は覚えた快感を肉棒にねだり涎を垂らす。

 

 

「ほらな、美穂のカラダの方がよっぽど素直だ…」

 

 

 宮城は自身を咥えて欲望に開花する花弁を目で楽しみつつ。

 

 熱く締め付けてくる柔肉に欲棒を擦り付け、突き当たっては後退し、また鋭く進撃する。

 

 

「ァッ…せ、んせぇえっ…、ァアぁッ…!!」

 

 

 切なげな表情に涙を浮かべても、美穂のその甘ったるい声は感嘆の喘ぎと告げる。

 

 もっとリズムを効かせて耳に心地よいBGMを聴こうと、宮城は激しく腰を打ち付ける。

 

 腟だけでの絶頂はまだ難しいだろうから、彼女が最も感じる花芯を捕らえ、華を添えてやる。

 

 

「ひぁああ…っ! や、そ…こっ、そこ、やぁあああっ…!」

 

「へェ…膣内は激しい方がよがるくせに、クリは優しくされたほうが感じるんだな美穂は」

 

「……っ、や、ぁ…! そ、んな、ぁっ、ぁああ、…ふぁあああ…!!」

 

「オマエが喜ぶと中の締め付けが、…くっ……すげ、っ…!」

 

「ぁ、やぁあっ、あぁああっ…! ぁあああ…!!」

 

 

 先程の無茶苦茶な扱いで敏感にさせられた蕾を、丁寧に優しく撫でられてしまうと、どうしようもない快感に知らずに膣内を揺るがしてしまい…それを内診されて、侵害されるプライバシー。

 

 恥辱と悦楽を投与され、受け止めきれずに困惑のまま欲に溺れる。

 

 しかし、荒れた吐息は美穂だけのものではない。

 

 他人の体を横暴に扱うその強引さは、宮城自身も情欲に焦れているから。

 

 

「…あー…くっそ、そろそろ、ヤベェ…!」

 

 

 宮城は美穂の両膝を自分の肩に乗せ、浮かせた患部を体重を乗せてさらに激しく貫く。

 

 淫水の音が効果音に足され、快感と胸の高揚を煽る。

 

 美穂は醜態を晒される屈辱を受け、逃げ出したい怖さと快感のはざまで涙するしかない。

 

 

「んゃ…っぁ、あ、宮城せん…せ…ぇえっ…!」

 

「……美穂…オマエ、そんな顔でそそるなよ…」

 

「っ……ぁあ、やっ、んっ…あぁああ!!」

 

 

 柔らかく撫でていた淫核を指が激しく玩ぶ。表面では熱い快感を滑らせ、中では更に鋭く抉るような奮撃で追い上げる。

 

 快感を急激に高められた美穂は胸を反らし、豊かな乳房を大きく揺らして嬌声をあげた。

 

 

「やっ、…ぁああ! ふぁあ、あぁあぁぁっ……!!」

 

 上下で涙しながら、絶頂に泣いて鳴く美穂。蜜は溢れ、透明に光り滴り落ちる。

 

 

 そんな顔しても

 わかってるさ‥

 嬉し泣きだろ?

 

 

 ほどなくして情熱が出口を求め熱く滾る。

 

 果てた彼女の姿に、淫欲をドクドクと解き放し……至極の溜め息をつく。

 

 しかし、まだ欲望の角度と硬度は治まらない。

 

 戯れに口でゴム装着、などしている場合ではない。

 

 焦りに疼いて吐き出した汚濁の栓を結んで捨て、続けざまに、今度は直接注入させる。

 

 

「ぇっ……せんせ、ゃ、んンぁあああ…! ふぁ、ぁあああ…っ、っ…!!」

 

 

 快感の上限に達して余韻の残る中に、再びねじ込まれる。

 

 生で挿入され驚きながらも、無言のまま余裕のない宮城の表情に、美穂は相手の強欲を悟った。

 

 

 さぁもっと泣き喚めけ

 誰にも見せない

 醜態を晒してみせろ

 

 

 

 この俺を魅せてみろ

 

 

 

 捕らえた獲物を逃しはしない。

 

 ――もう美穂は、俺の餌食だ…。

 

 

 2本目の注射は衛生上、管理の行き届いていない、…漏れてしまいそうな、劇薬。

 

 

「んンッ…ぁ、ふぁあぁあっ…!! ゃあっ、宮城せんせ…ぇ、…まっ…て…!! ゃ、だっ…!!」

 

「無理言うな…あんま締めると、出るぞっ…!」

 

「ゃ、やぁああっ…! 待っ、まっ…! な、……生じゃんっ…!!」

 

 

 射精直後だというのに…まだ精液が残っているかも知れない状態で直接挿入では、最初の避妊措置も意味がない。

 

 しかし宮城はお構いなしに、挿入させたままの結合部を軸にして、体力消耗にぐったりしている彼女を抱えて方向転換させた。

 

 それは単なる宮城の気分転換でもあったのだが。

 

 再び開始された相手の猛撃に対し、美穂にはかなり不利な体勢だった。

 

 膣口が背中側に近い下付きのため、正常位よりも更に深く相手の侵入を許してしまう。

 

 

「ひァああああっ…! ぁ、アッ…! やっぁあぁああっ、せ…んせぇえぇっ…!!」

 

 

 獣の交配のような、後背位。獰猛な野獣に激しく快感を貪り取られる。

 

 背後から襲い来る荒々しい熱情に、シーツを掻きむしる美穂。

 

 その腰を掴んでいた宮城の腕が振動に揺れる乳房を掴み、尖端をこねだす。

 

 

「ゃっ、…んぁああっ…!! だ、めぇっ、そんなっ…やだぁああっ…!!」

 

 

 甘美の愛撫に戸惑い、拒絶の言葉ばかり口にする美穂。

 

 しかし宮城を迎える彼女の熱く狭い雌しべは、口を窄めて雄しべを飲み込みエキスを出させようと吸い付き…危うく受精させてしまいそうになる。

 

 ――実に淫靡な華だ。

 

 しかし美穂自身はまだ行為に不慣れで、抽送の度にその衝撃から体を浮かせてしまう。

 

 

「オイ。腰、落としとけよ」

 

「ん、んぁあっ…! そ…んなこと、言われても…っ……ふぁ、あああ…!!」

 

「チッ。しょーがねーな…」

 

 

 片手で乳房を掴みながら、もう片手を美穂の濡れた蕾へと伸ばし、ゆるやかに刺激してやる。

 

 

「ひァああっ!! ぁっ、や、ぁああっ!! そんなっ…ぁっ、やぁあああ…っ!!」

 

「いやならよけろ。…だが欲しいなら…」

 

 

 宮城が指を離そうとすると、美穂は快感を求めて腰を落とし、すがるように自身の花心を押し当てる。

 

 

「やっ……宮城先 生っ…! もっと…して、欲しいよぉっ…! …せんせぇえ…っ!!」

 

 

 美穂は涙ぐんで振り返り、宮城の指を求めて自らの淫核をあてがい、腰を前後に低く揺らし始める。

 

 

「ぁ、あっ、…あぁあああ!! っ…こ、んな…の、すごいっ…感じちゃぁあっ……ふぁああ…!!」

 

 

 他愛ない‥

 堕ちたか美穂も

 

 

 そんな彼女に、昇り、高ぶる。

 

 生で感じる、圧迫に狭く押し寄せる膣の壁。

 

 激しく摩擦すれば熱で蠢き、侵す度に飲み込まれる錯覚に陥りそうになる。

 

 …そろそろ限界が近い。処方を、誤らないようにしなくては…

 

 

「…めんどくせ……も、中に、出すか…っ?」

 

「ゃ、やだぁああっ…! 中は、いやぁあああ…っ!」

 

「美穂を本気で手に入れよーとするなら、…それも手だろ」

 

「んゃ、そんなっ、冗談…っ」

 

 

 どうせ脅しだろう、と見上げた美穂の瞳に映るのは、淡々と鋭く腰を突き上げ欲望に浸る、うつろな半眼。

 

 臆した美穂が息を飲むと、知らずに身を引き締めてしまう。

 

 

「っく…! つーかオマエがそんな締めたら、マジ出る…っ」

 

「…、…っよ…!」

 

「あ…?」

 

「宮城、せんせぇならっ……、出し ても、…いいよっ…!」

 

「…出すぞ、イくぞっ…!」

 

 

 ――加速。加速加速、加速。

 

 

 荒立ち、勇み立ち、はやる鼓動を限界まで堪え、更に加速させる。

 

 

「ふぁ、あぁあああ!! ァ、あっ、イ、イく、イッ…ちゃっ…ぁああああ……!!」

 

 

 珠の雫が滑る白い背を快感に震わせ、…とても綺麗だ。

 

 そしてその何もかもを白濁の精子で穢してやる。

 

 ――実にいい気分だ。

 

 

「…っ、は、……っ…、も、だめだ…」

 

 

 ベッドに倒れ込むように、息を荒げた宮城は美穂の横に寝転ぶ。

 

 美穂も呼吸を整えながら背中に手を伸ばし、指を廃液に絡めてそれを眺めた。

 

 

「…中、でも…良かった …のに…」

 

「ハッ……、冗談…」

 

 

 わかってるさ

 美穂のは冗談っつか

 

 

 

 現実逃避だろ

 

 

 

 家と学校嫌いの美穂のことだ。『妊娠』すら、そこから逃げ出すのに都合のいい『口実』だろう。

 

 

「いらねーよ、そんな女」

 

 

 宮城は美穂の頭を鷲掴み、ごしごしと撫でた。

 

 そして「寒い」などといいながら、汗だくの体で美穂に絡みつくように、ぎゅっと抱き締めた。

 

 …美穂にも分かっていた。

 

 宮城はいい加減で理不尽な男だし、本人もそれを分かって本当に無責任になることはしないと。

 

 そしてそんな男が本気で恋などしない、とも理解した。

 

 

 

 

 

「…宮城先生、ホントに女の体…よく知ってるんだ」

 

「ダテに保健医はしてねーだろ」

 

「モテるっていうのも、ウワサだけじゃないんだ…」

 

「ウワサの定理を教えてやろーか。『武勇伝』、だ」

 

 

 白衣をまとい常識人ぶった背中は、しかしいつもながら非常識に保健室で煙草に火を付ける。

 

 美穂は相手の視線がないうちにと、制服に身を包み、乱れた髪を手櫛で梳き直す。

 

 と、宮城がポツリとこぼした。

 

 

「きれいだな…」

 

「え?」

 

「夕陽」

 

「…あ、うん…」

 

 

 窓辺に立つ宮城がカーテンを開ける。

 

 西日が射し込み、保健室と美穂の白い頬を赤く染める。

 

 

「で? どーだった? 良かったんならまた来いよ。次は潮吹かせてやる」

 

 

 ニヤリと笑う宮城に、美穂は照れ隠しに枕を投げた。

 

 キャッチされ、他に投げるものを探すと目に入る、小さな箱に印刷されたラブとスキンの文字。

 

 …思えばラブもスキンもなかった行為。

 

 触れられ抱かれ、自分の体に性を感じた。

 

 今まで未知だった感覚が目覚め、揺さぶられて激しい快感を何度も得た。

 

 

「…きもち、よかったけど……」

 

 

 だが、それは体をつないだ間だけ。

 

 汗が引き、熱が冷めれば興醒め。

 

 

「セックスって、こんなもんかって思った」

 

「あァ? まだ足りねーのかよ」

 

「そうじゃなくて! …宮城先生は、相手なんか誰でもいいんでしょ?」

 

「そりゃお互い様だろ」

 

「……」

 

 

 落ち込んでいた彼女を慰めてやった。

 

 男と女のすることのエグさを叩きつけ、快楽に溺れさせてやった。

 

 それは美穂自身も望んだことだ。

 

 しかし煙草の白い息を吐く宮城に、当て付けのような小さな溜め息が返させる。

 

 

「さみしーんだね。大人って」

 

 

 ‥‥ハッ

 笑わせるな

 

 

 LOVEのないSEXはNOってか?

 

 めでたい理想論語ってキレイ事カタルシスかよ。

 

 お望みならそのおしゃべりに付き合ってやろーか。

 

 アフターケアも大事だ。

 

 

「――大人になったからって、誰だって完璧な人間になるわけじゃねーんだ。ハメもはずしてハメたくなる」

 

 

 宮城はロッカーから取り出したネクタイを締め、大人を論じる。

 

 

「ただアソビ方がうまくなるだけだ。子供みたいに、ワガママばっか言ってらんねーの」

 

 

 仕事をする時はそれなりに真面目に働き、遊ぶ時は思い切り遊ぶ。

 

 オンとオフのスイッチの切り替え、それが大人のたしなみ。

 

 そう言って大人の玩具を鍵付きの引き出しにしまい、さっさと日常に戻る宮城に、美穂は言いようのないわだかまりを感じた。

 

 

「私、そんな大人になりたくない」

 

「おめでとう。美穂は今日、その大人の階段を一段昇った」

 

「……っ、ちがう…私は…」

 

「違う? なにが? いーじゃねーか、アソビで結構」

 

「私はっ…でも、やっぱり……先輩がすきだもん!」

 

「……」

 

「だから…こーゆーの、気持ちよかったけど…そんなの…」

 

 

 乱れたシーツの上で体育座りをし、膝をかかえ自分を抱く美穂。

 

 誘惑に手を伸ばし、快楽に浸ったものの…終わってみれば後には何も残らない。

 

 …何も得てはいない。

 

 それはそうだ。

 

 最初から二人には、何もないのだから。

 

 

「こんな…こんなの、ただのサイテーのセック…」

 

 

 ――ガシャン‥ッ!!

 

 

 言葉を遮る暴力の音。

 

 ビクリ、と美穂の体が警戒に強張る。

 

 驚きに微動だに出来ず、目線だけで様子を探ると…背を向けた宮城の蹴った椅子が、床に転がっている。

 

 

「……せ、んせ…」

 

「オマエ……何しにここ来た?」

 

 

 それは二度目の質問。

 

 自分からここに来た美穂に最初に、そして終わった今もう一度問い正す。

 

 

 最低だと?

 肉体関係が?

 ‥それをさせた俺がか?

 

 

 そんなの百も承知でテメーで来たはずだろ。

 

 

「ヤツを忘れるためじゃないのか? 美穂こそ俺を利用して、慰めてもらいたかったんだろが」

 

「…っちが……そんなんじゃ…」

 

「違わねーよ。エラソーに人に説くなら言ってみろ。何が不満だ? 俺に何を言ってほしい? …何が言いてェんだ美穂は! ヤッた後でゴチャゴチャ言うなよ!」

 

「……っ…」

 

「チッ、……んどくせェなっ! やっぱガキはダメだ、話になんねー!!」

 

 

 苛立ちに声を荒げて悪態をつく宮城。

 

 不機嫌な相手に美穂は萎縮する。

 

 ついさっきまで熱い肌を重ね合っていたのに…失意に涙が浮かんだ。

 

 

「…先生だって……」

 

「んだよ。また人のせいかよ」

 

「さいしょは、宮城先生から私に手を出したじゃん…なのになんでっ…何でそんなひどいこというのっ!?」

 

 

 …出た。女の感情論。

 

 自分の非より相手を非難しまくって責めるだけの論議っつか泣き落とし。

 

 論点がズレる。

 

 

 ‥つーか、

 俺こそ何を

 ムキになってる‥‥

 

 

 

「美穂…鍵、返せ」

 

「えっ……」

 

「オマエにはまだ早かったな」

 

「っ…」

 

「後悔先に立たずだ。過ぎたことギャーギャー言うなら出てけ」

 

 

 宮城は怒りを通り越して呆れた。

 

 子供相手に、大人げない自分に。

 

 しかしそうやって吐き捨てられた言葉に、美穂はなぜ相手が急に怒ったかに気付いた。

 

 

「……宮城先生…、…ごめん…」

 

「謝るとか最悪だな。余計ムカつく」

 

「あっ…ちがう、その…」

 

 

 この場面での謝罪は禁句だ。

 

 行為自体を悔いて詫びているように聴こえ、相手をむなしくさせる。

 

 思いつくままを口にしていた美穂は、再び言葉の意味をはき違えられないようにと、頭の中で台詞をしっかり整理する。

 

 

「…あのね、私……後悔は、してないよ」

 

 

 最低のSEX

 呼ばわり

 しといてか?

 

 

「ただ、こんなすごい体験…好きな人とした方が、って…」

 

 

 ‥‥

 

 

「なんていうんだろ、その…」

 

 

 自分でも捕らえどころのない感情を、うまく伝えられない。

 

 でも誤解はされたくない。

 

 

「けど、宮城先生となら、…いいの。うん、そう言いたかった」

 

 

 否定しつつも、自分では納得している。

 

 心のよりどころでもあり、頼りにしていた先生。

 

 だから宮城となら…そう思って保健室を訪れた。

 

 でも気持ちがないのはさみしい。それも本当。

 

 ようやく出せた答えに自分でうなずき、涙を拭う美穂。

 

 その様子に、宮城も彼女の言い分を理解した。

 

 

 ‥ったく

 それなら最初から

 そう言えよ

 

 

 バカ正直すぎる。友達を作るのが下手なわけだ。

 

 裏を返せば素直すぎる。

 

 

「宮城先生のこと、傷付けてごめん…」

 

 

 別に

 傷付いちゃいねーし

 

 

「えっち…良かったよ、すごく」

 

 

 ‥オイそれ

 男の、

 俺のセリフ

 

 

「……ま、俺もあれだ。…言い過ぎた」

 

 

 本来の仕事がないまま役目を終えそうなタバコを灰皿に押し付け、少しの反省を見せる。

 

 言いたいことを言ったまでだ、謝りはしない。

 

 が、両者とも言葉を選ぶべきだった。

 

 無愛想な背中に、美穂は仲たがいの修復が出来たのかを伺う。

 

 

「鍵、持っててもいい…?」

 

「美穂に必要ならな」

 

「いる、持ってるっ」

 

 

 ベッドから降りて上履きのつま先でトントンと床を鳴らし、ドアに向かって歩く。

 

 ついて来るのは少しの痛み。

 

 好きな人と迎えるそれは、どんなものだろうか…。

 

 

「先生と私、恋人同士だったら良かったのにね」

 

「――はっ?」

 

「なんてね。じゃ、帰る」

 

 

 鍵を開け、ドアを開ける美穂。

 

 

 ‥まてまて

 そのまま帰るな

 

 

「オイ」

 

 

 腕を掴んでグイッと引き寄せる。スローモーションになびいて揺れる長い髪。

 

 呼び止めるだけのつもりが、思わず額に軽く口付ける。

 

 驚いた大きな瞳が、自分を見る。

 

 

「またいつでも来い、美穂。…待ってるし」

 

 

 気の効いた言葉も出ず、少し悪びれた様子で視線を合わせない宮城。

 

 しかし答えを待ってチラリを美穂を見る。

 

 そして目を奪われる、とびきりの極上笑顔。

 

 

「…うん! またね宮城先生! またね!!」

 

 

 嬉しそうに明るい声を弾ませ手を振り、バタバタ足音を廊下に響かせ走り去る美穂。

 

 薬を処方してやったのはこちらなのに、倍にして返される。

 

 あの笑顔だけで、全て良しとしてやろうなどと思ってしまう。

 

 

「ハハ…何が恋人だよ。心にもないこと言いやがって」

 

 

 ドアにもたれかかって腕を組み、元気な後ろ姿を見送る。

 

 捕えた鳥は檻に入れず放し飼い。

 

 自由に羽ばたくからこそ美しい。

 

 手なづけた以上、きっとまた舞い戻る。

 

 いつかそのまま飛び去るとしても、…それでいい。

 

 快感共有の関係

 ハードの充実

 ハートなんて

 ソフトは不要

 

 

 それにしては、心乱される矛盾。

 

 胸ヤケに加え動悸の症状。

 

 

 クソッ

 こんなのは

 気のせいだ

 

 

 護身のために、誤診?

 

 違うな。

 

 あいにくメンタル面は、専門外だ。